葉っぱを見上げて空をあおいで

花よりも 葉っぱに魅かれて空を見る

なつつばき まんまるな蕾の君は夏衣の美女

おや?

まん丸でつやつやにピカリとひかってるものを見つけたよ。

誰なのかな?

立ち止まって思わず声を上げた。

きれいだ。

夏のレースを纏った涼やかな美女が、ピカリと光るまんまると並んでいた。

たくさんの葉の陰から、そっと窓を開け空を眺めているように咲いていた。

なつつばき。

可憐なきみの前を通るたびに立ち止まってしまう。

まるで深窓の令嬢を覗き見るみたいに。

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光る葉っぱ

生垣の葉っぱのくせに、光っているんだ。

くせにって、なんだよって思うかもしれないけど、

実際のところ、ほとんどの人は気がついていない。

きみが太陽の輝きを受けて光っていること。

ただ光っているだけじゃなくて、高貴なビロードのような光沢だってこと。

すごいよね。

こんな滑らかな輝きにはなかなかお目にかかれないよ。

気づいてはもらえていないけどね。

でも、だいじょぶ。

きみのそばを通った人は、なんだかわけもなくいい気分になってるはずだから。

きみには、それだけのパワーがあるよ。

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意外な一面を見せてくれる アオキ

ピンと背筋を伸ばしてかしこまっている初々しいキミが...

あの、アオキさんだとは!

いつもなら堅くてずっしりした背広を着て、

どっしりした皮の椅子に腰かけてる。

どんな過酷な運命にも取り乱さない。

そんなキミの、いきなりのこの姿。
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春になると、

こうやってはしゃいでたりもするんだね!

春はいいね。こっちまで楽しくなったよ。



目が合ってお隣からこんにちは!みたいな花

なんと愛らしい。

鮮やかな黄色がポンポンと明るく光って目の前に現れた。

「こんにちは」と陽気に挨拶してくれるから、こっちも思わずニコッと笑顔。

まるで、小さい頃から知っているお隣のかわいらしいお嬢さんのよう。

ミニバラのようでもあるし、つるバラのようでもあり。

可愛らしいあなたは誰かな?

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もはや区別できません春のスター 梅・桃・木瓜

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奇跡だと思う。

私の名前は、「美梅」美しい梅と書いて「みうめ」。

親友の「桃香」はその名の通り桃の香りと書いて「ももか」。

「梅と桃、ここに桜が来ればもう最強じゃない?」桃香がそういってケラケラ笑っていたら、突然、目の前に「桜」が現れた。

桜子だ。

「うへ!梅と桃と桜がそろった!」いちいち口に出さないと気が済まない桃香が叫んだ。

「そろそろ私の出番かと思ってさ!気を利かせて来てあげたわよ」

呼んでもないのに現れた桜子が斜に構えた瞳をキラリと輝かせて言った。

「呼んでない」桃香があっかんべーをしながら桜子の前を大またで横切った。

春の黄金のスター三人が、こんな狭い場所で勢ぞろいするなんてそうそうあることじゃない。

ミニスカートの裾がいつも弾んでる桃香。明るくて陽気で、他人の目を気にせずにポンポン物を言う。そういうところがね、いいなって思う。好きだなって。だって私にはできないもの。憧れかな!

桜子はいつだってスター気取り。

「私が姿を見せれば、誰もがたちまち笑顔になるのよ」

そう言って、顔のそばまでぐいぐい寄って来る。桜子の肌の美しさといったら遠くまで透けて見えそうなくらい艶やかで眩しい。

ヒラヒラした薄いベールみたいなスカートなんか着られるともう誰だってノックダウン。確かにスターだと思う。

それに比べて私なんか、梅よ、梅。

なんだかババくさくて嫌なんだ。梅干しだの、松竹梅だの。干されて干からびてシワシワになった上に塩っぱくなるイメージなんて正直要らない。

正直◯◯って言い方、正直嫌いなんだけどね。だって、正直〜なんすよ〜って言う人に限って嘘つきだったりするじゃない?でも、ここでは、あえての「正直要らない」なのよ。松とか竹とか葉っぱばかりの地味な人たちと一緒くたにされちゃって、私だって立派に花を咲かせてますーっつーの!

なんて、ちょっとキレたくなったりしてね!

だけどね!

もっと悲惨な子もいるのよ。

その名も木瓜子ちゃん。

木瓜」と書いて「ボケ」と読む。

なんていうかちょっとおとぼけさんみたいよね!くすくす。

あ、人の名前を笑ったりしたら最低よね。

その名前に至るまでの高貴な理由が、きっとあるに違いないわよね。

ごめんなさい。

 

皆んなが冬に飽きる頃わたしが現れ、冬のしんとした景色の中、小さく色を灯すの。まだまだ、さむっ!ってなりながらもちょっとだけ地味に咲いてる私の姿。まるで、ちょっと控えめな灯りみたいでしょ。しみじみ心和ませるのよ。本当はね、最近、そんな自分も好きになってきたところ。自己肯定感?ってやつ?大事よね。笑

そのあと、なーんとなく春っぽい日がポツポツと出始め、長いコートをミニスカに変えた桃香が登場して目にも鮮やかなピンクを弾けさせるわけ。

ほら!そろそろ春が来るわよ!みたいに!

その頃になるともう最悪。

皆んな、梅ちゃんなの?桃ちゃんなの?って誰が誰だかわからなくなっちゃうのよね。

この強い香りは、やっぱり桃ちゃん?なんてやってるところに、木瓜子ちゃんまで乱入してくるから、ほとんどの人は、梅やら桃やら木瓜やらわけわかんないんじゃないかしら。

どんだけ間違えたら気が済むわけ?って言いたくなるけど、これって、地味だと思い込んでた私も実の所すっごく魅力的ってことよね?

ごっちゃごちゃのわっちゃわちゃが続いてる間にね、今度は私たちの神様みたいなお日様がどんどん雲の上に登って大好きな光をプレゼントしてくれるの。ときめいちゃうわよねー。煌めき感ハンパないわよ。

そこへ待ってましたと、ラストを締めくくるように、そお!桜子がジャジャーンとすごい豪勢に着飾ってやってくるのよね〜。

この華やかバトンリレー。

もはや、奇跡としか言いようがないわよね!


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これはきっと「葉っぱセラピー」

日々の中で、いつの間にか励まされている。

それに気がついたのがつい最近。

いつもそこいらにいて少しずつ形を変え、目の前にひょいと現れる君たち。そんなキミたちを、見上げたり近寄ったり、用もないのに立ち止まったり。あれこれとその姿から聞こえてくる声にニヒニヒと心の中で笑ったり。ボーっと見とれてて時間に遅れそうになって走って息が切れたり。暇なのか?って思われるかもしれないけど、別にそんなに暇でもない。暇ではないけど、キミたちを見つめる暇はある。っていうか、そうせずにいられない。キミたちからもらう何かに目覚めてしまったから。

葉っぱの皆さん、木々の皆さんいつもありがとう。

私にとって、キミたちはきっと「セラピスト」なんだね。

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すっくすっくと空を目指している君は誰?コブシ・モクレン

三月のある日、とても陽気のいい日に君が空に伸びているのを見たよ。

これでもか、これでもかと上を目指していたね。美しかった。

すっくと高貴に空を目指していて。


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つぼみの君たちは白い騎士だね。

まるで守るものがあるみたいに何かに立ち向かってる。

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その後、数日してふと見上げたら、君によく似た子が咲いていたよ。


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きみが、モクレンなのかコブシなのかよくわからないけれど、君たちは春に咲くんだね。


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初めてあなたを見た時。一瞬で動けなくなった人が私。え?ふーんって。なにそれ。なんで?って聞かないかな~ふつう。全く、相変わらずのツンデレなんだから。どうして動けなくなったのか聞きたいんでしょー。言わないよ~。はははってさー、なんで笑ってんのよ。言わない。もう絶対言わない。一番はそのシャープな横顔がまじてど真ん中だったんだけどね。兄弟のコブシ君は背も高くって、自由奔放で、派手だし首元に緑のネッカチーフを付けたりしておしゃれよね。誰だってコブシ君に見とれてしまうと思うわ。でも、私は断然レン君派。ちょとシャイで控えめなくせに凛とした強さがにじみ出てる。だからといって考え方が古いわけじゃないと思うの。ピンク色のシャツも堂々と着るのよ。ん?そこじゃないでしょって?(笑)わかってる。いつも上を向いて前向きに生きてる。そんな姿にグイグイきてるのかもしれないな。

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