若い父親に抱っこされた男の子が、道端の葉っぱを次々と指差しながら、葉っぱ!葉っぱ!と叫んでいる。 見ると、葉っぱたちがぼうぼうと茂っているのだ! 強い陽ざしを浴びて、すっかり濃い緑色になっている。 夏が来ている。 生き生きと茂る草の中にたくさ…
心が悲鳴をあげていたら、一旦違う方向に歩いてみよう。 たいてい何かにとらわれているから。 囚われているから逃げられない。 きっと囚われている呪いがあるはず。 たぶんだが、 欲。 支配欲、金銭欲、そのままいたい欲、面倒くさいからやりたくない欲、い…
天空を突き刺すように伸びている枝。 枯れているように見えるけど、枯れてはいないよ。 待機してるんだ。 思いっきり手足を伸ばせるその時を待っているだけなんだ。 目を凝らして、よく、よーく見てみて。 小さな小さな葉っぱの蕾がこっそりついている。 春…
ずいぶんと昔にとても小さい映画館でロシアの映画を観た。 オブローモフの生涯という題名だった。 なんだか全体的に気だるいムードのよくわからない映画だった。 主人公のオブローモフは、恐ろしく怠惰な人間で何もしてなかった。何もしないでだらだらと過ご…
冬の庭はさびしい。 生き生きと輝く光るものがない。 真っ赤な椿さえ、漆黒の葉っぱの中にひんやりと光るどん詰まりのネオンみたいだ。 ただの庭でさえ、これだけ寂しいと感じるのだ。 空襲や爆撃で、焼かれたり壊されたりした場所を目にしたなら、どんなに…
胸の中に溜まりに溜まったストレスの塊を何とかしたくて空を見上げるが、ぎらついた太陽がまぶしいばかりで、慰めになる葉っぱの皆さんの顔すらよく見えない。 こうなったらもう、外に飛び出すしかないのである。 じっとしていてはいけない。 外に出れば、自…
なんの落ち度もないはずなのに、降って湧いてくる災難がある。 いったい? なんで? こうなった? って思うけど、深く考えるのはやめよう。 考えれば考えるほど時間の無駄。 どうにもならないし。 何かの巡りでそうなってしまっただけ。 それだけ。 起きてし…
おや? まん丸でつやつやにピカリとひかってるものを見つけたよ。 誰なのかな? 立ち止まって思わず声を上げた。 きれいだ。 夏のレースを纏った涼やかな美女が、ピカリと光るまんまると並んでいた。 たくさんの葉の陰から、そっと窓を開け空を眺めているよ…
生垣の葉っぱのくせに、光っているんだ。 くせにって、なんだよって思うかもしれないけど、 実際のところ、ほとんどの人は気がついていない。 きみが太陽の輝きを受けて光っていること。 ただ光っているだけじゃなくて、高貴なビロードのような光沢だってこ…
ピンと背筋を伸ばしてかしこまっている初々しいキミが... あの、アオキさんだとは! いつもなら堅くてずっしりした背広を着て、 どっしりした皮の椅子に腰かけてる。 どんな過酷な運命にも取り乱さない。 そんなキミの、いきなりのこの姿。 春になると、 …
なんと愛らしい。 鮮やかな黄色がポンポンと明るく光って目の前に現れた。 「こんにちは」と陽気に挨拶してくれるから、こっちも思わずニコッと笑顔。 まるで、小さい頃から知っているお隣のかわいらしいお嬢さんのよう。 ミニバラのようでもあるし、つるバ…
奇跡だと思う。 私の名前は、「美梅」美しい梅と書いて「みうめ」。 親友の「桃香」はその名の通り桃の香りと書いて「ももか」。 「梅と桃、ここに桜が来ればもう最強じゃない?」桃香がそういってケラケラ笑っていたら、突然、目の前に「桜」が現れた…
日々の中で、いつの間にか励まされている。 それに気がついたのがつい最近。 いつもそこいらにいて少しずつ形を変え、目の前にひょいと現れる君たち。そんなキミたちを、見上げたり近寄ったり、用もないのに立ち止まったり。あれこれとその姿から聞こえてく…
三月のある日、とても陽気のいい日に君が空に伸びているのを見たよ。 これでもか、これでもかと上を目指していたね。美しかった。 すっくと高貴に空を目指していて。 つぼみの君たちは白い騎士だね。 まるで守るものがあるみたいに何かに立ち向かってる。 そ…
冬の終わりに梅林を散策していたら、見たことのないたくさんの白いツボミを発見。 葉っぱもない枝にふわふわとぼたん雪のようにくっ付いている。まるで、老いた母親の細い腕にしがみついている赤ん坊のよう。 白いフリルの帽子をかぶってうつむいている。 フ…